臨床リハビリテーションの森〜日本一わかりやすいリハ知識〜

回復期病棟8年目の理学療法士。多くの医療系学生や医療従事者、リハビリに関わっている方々に、臨床リハビリテーションに関する情報を、「日本一分かりやすく」配信できるブログ作りを目指していきます。

【求められる臨床家】に必要なたった1つのこと

【求められる臨床家】

  

このタイトルを目にした時、

あなたはどのような人物像を

思い浮かべましたか?

 

・身体の痛みを消失できる人?

・話しやすい雰囲気の人? 

・生活を想定した機能的評価や治療、方針の臨床推論を実行できる人?

 

結論から述べます

【求められる臨床家】とは、

「利他的主義」を徹底できる臨床家

だと、私は考えています

 

  まぁ「言われれば、当たり前」ですが

言葉を体言化するのは意外にも大変かと思います

 

 

当然のことながら

患者さんの価値観は一人一人異なり、

臨床家へ求められる介入内容やその程度は、

一重に「これ」と言えるものではありません。

 

また、患者さんには

誰かに依存したい時期もあれば、

一人にして欲しい時期も存在します。

 

必然的に

求められる条件は、

「広義」且つ「変則的」なものとなります。

 

 

しかし、ここには

「揺るがない法則」

が存在しています。

 

 

もう一度言います

「利他的主義」

という視点が、常に第一優先である

ことが、「臨床家として認められるすべて」

であり、たった1つの要素だと考えています

 

 

例えば、

どんなに疼痛治療の技術に長けた臨床家でも、

退院後の具体的な生活環境(ICFでいう、背景因子)を把握できていなければ、

セルフケアの方法や、動作指導などにおいて

適切なアドバイスが出来ず、結果、対症療法として終始することがあります。

 

(今は痛みが取れたみたいだけど・・・でも、これって先生いなくなったらどうなるの?というか、そもそも家でまた痛くなるかもってんなら、その原因と解決策を教えてよぉ。。。)

 

と、患者さんは不安を募らせるばかりの、マイナスパターンになることも考えられます。

 

 

また、どんなに退院後の生活環境について

情報収集を徹底したと思っても、

痛みに苦しむ患者に対し、

「今は仕方がないんです。寧ろ、痛いのは今頑張って運動している証拠ですよー」

などと説明しても、

「痛みを加味してくれない臨床家

としてのレッテルによる希薄な信頼関係では、

具体的な生活情報を得られない可能性さえあります。

 

 

(痛いのにもっと頑張れって・・・やる気なんて起きないわよ。。・・・だったら、まずこの痛みを、あんたなんとかしてよ!)

など、精神的に焦ることで

先々に待ち構える退院後のことを

考える余裕がなくなるかも知れません。

 

 

 そもそも、

もし、自分が目の前の患者さんだとしたら?

 

 

安くない入院費を払い、

生活するのに障害が邪魔をしてリハビリを受けたいと思って入院した

その病院でお世話になる担当のセラピストが、

 

勉強嫌いで

間違いがあっても素直に認めてくれず

自分勝手かつ威圧的な態度で

「ここが弱い」だのなんだのと、人ではなく障害しか見てくれず否定的な事ばかりを言ってくる

 

でも、こちらが思っていることを言ってしまったら「面倒な患者」だと思われて、これからまともに対応して貰えないかもしれない

or「言うことの聞けない患者」だとレッテルを貼られ、退院支援も十分にされないまま強制退院...

 

 

 

 

ね、「ゾッ」としませんか?

 

 

 私がこの視点を持った時

背筋が凍り、冷汗をかいたのを

今でもよく覚えています

 

 

 

 

どんな時も、まずは

「患者さんの立場」

になって、考え、接する

 

 

そこから

患者さんの持つ問題点に対する仮説に

解釈の幅を持って、対応することなど、

具体的な専門分野へ、step upしていけるのではないかと思います。

 

 

ここで付け加えておきますが、

勿論、ご家族など、周囲の方の立場

考慮することも重要です。

 

実際、介助を要する病態であれば

特筆すべき項目と言えるでしょう。

 

しかし、それでもやはり、

最終的な人生の当事者は、患者さん本人であり、

本人の希望を第一に考え、できるだけ意向を汲めるよう、

私達は、家族の気持ちを汲みながら情報収集を徹底したり、

人・物・サービスなどの環境設定を提案することで、患者さん本人や支えていく人が望む生活が可能であるかどうか、共に検討していく必要があるのだと思います。

 

 

では、上記を踏まえた上で今回のテーマである

「求められる臨床家の条件」

について、以下を参考にしていただけたらと思います。

 

1理学療法士に求められるもの」/スタディサプリより

 ① 学び続ける「向上心」

 ② 「健康」な心と身体

 ③ 人を「思いやる気持ち」

 

2「優秀な臨床家」の特徴/福井勉より

  • 自信がある
  • 人に押しつけない・・・・・・・・・・・・・「軸」
  • 謙虚である
  • 難しいことを、単純化する・・・・・「説明」ができる
  • 陰で努力している
  • 人が集まる・・・・・・・・・・・・・・・・・「依頼」
  • 軽いフットワーク・・・・・・・・・・・・・足軽

 

 

更にここで、

臨床」に関する余談を一つ。

 

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「先生・・・あの、ここだけの話なんですけど・・・もう、“あの子”には正直来て欲しくありません・・・」

 

当時、回復期PT2年目の私に、

40代女性の整形疾患を持つ担当患者さんが、

勇気を振り絞って仰った言葉でした。

  

この時、私は

1年目の後輩(“あの子”)と一緒に、

この患者さんを担当していました。

 

上記の患者さんからの訴え後、

その後輩と患者さんのリハビリ場面を

近くで確認してみた時のこと。

 

元々、筋硬結が散在しており、

その痛みの訴えが強かったこの患者さんに対し、

 

「運動している証拠」理論を語りながら、

患者さんの眉間の皺に一切構わず横圧刺激を加え続け、

昨日テレビでやっていた好きな男性アイドルグループのバラエティ番組が、いかに面白かったかを

およそ40分もの間、プラットフォームで軟部組織モビライゼーションをし続けながら話していました。

 

 

 

あとで後輩に、なぜ運動療法をせず、

一方的な話題で話をしていたのか聞いたところ、新人で経験不足であるが故に「彼女なりに」必死で話題を作り、その場の空気を和ませようしたとのことでした。

 

 

実際、技術や経験の浅い新人は、その場を取り繕うかのように、患者さんとの信頼関係を作ることを優先しようと躍起になる事があります。

自分も昔そうでしたので、偉そうになど言えません。笑

 

 

ですが、理由はどうであれ「患者さんの状態・状況把握を怠り、不利益を生じさせてしまった」ことに変わりはなく、患者さんからの訴えを上司に報告した後、その後輩は担当から外される

 

という、新人にとっては辛い経験となる事象が起きました。 

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「こんなの、ちゃんと患者さんの表情を見ていたら起こらないし、普通に考えてあり得ないでしょ!」

と、学生もしくは新人セラピストのあなたは思うかも知れません。

 

しかし、患者さんを「良くしてあげたい」という想いが強すぎると、時に視野が狭くなり、自分では予期していなかった部分で、患者さんとの「希望のギャップ」が起きていることがあります。

 

 

例えば、

臨床家の「良くしたい」という気持ちと、

患者さんの「早く帰りたい」という希望

がそうであるかのように、

臨床家に悪気はなくとも、

「ズレ」てしまうことがあるのです。

  

 

人生に、100%など存在しません。

この事例から見えてくる教訓を、

あなたも頭に留めておいてほしいなと思います。

(中堅以降の方は、思い出してみてください。)

 

 

現在8年目になる中堅の私自身も、

このような話が表面化してきていないだけで、

同じような思いを患者さんにさせてしまっているかも知れないと、常に細心の注意を払いながら日々、全力で患者さんと生意気にも向き合っています。

 

 

どうか、このブログを読んでくださった読者の方々には、この後輩と同じ轍を踏まないよう、

決して慢心せず、専門的な知識・技術を、向上心を持って獲得していく

 

 

まず、その前に

 

 

「もし、患者さんが自分自身だったら・・・」

という概念を、常に念頭に置きながら

患者さんを思い浮かべて欲しいと思い、

  

このブログ記事、最初の内容とし、敢えて長々と書かせてもらいました。

それ程、臨床家としては基盤となる内容だと思っているからです。

 

 

 

 

 

是非、

「求められる臨床家の条件」を今一度

 

 

「言語」レベルから

「臨床」レベルまで

 

 

 

しっかり咀嚼し、

イメージとして構築して頂けたら幸いです。

 

 

明日の患者さんへ、

少しでも活かされますように・・・

ご意見/ご感想のある方は、是非コメント欄の方へ宜しくお願い致しますm(_ _)m